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【ライブレポート】
鼓童浅草特別公演『粋』。
浅草と鼓童の絆を見た感動の公演!!

2019年6月27日から30日の4日間、浅草公会堂で「鼓童浅草特別公演『粋』」が開催された。

江戸を象徴する言葉である「粋」。江戸の中でも祭りで賑わい正に「粋」が体現された浅草で、鼓童は一体どのような公演をしたのか。今回はそんな『鼓童浅草特別公演「粋」』の様子をお届けする。

 

太鼓芸能集団『鼓童』

撮影;岡本隆史

太鼓芸能集団「鼓童」は太鼓を演奏するプロ集団。数多く存在する太鼓プロ集団の中でも、トップクラスに位置する知名度とそれにふさわしい技術力を持っており、日本国内だけでなく世界中でも活躍するワールドワイドな太鼓集団。

■鼓童公式Webサイト

https://www.kodo.or.jp/

■鼓童紹介記事(和楽器メディア)

https://wagakkimedia.com/media/2019/01/kodo/

 

鼓童浅草特別公演『粋』

鼓童展示ブース

今回も浅草公会堂のロビーには鼓童の展示ブースがあった。鼓童のことを色々知ることができるこのブースは訪れた観客の楽しみの一つである。鼓童の現在だけでなく、研修所の様子なども知ることができるのはとても面白い。鼓童の過去、現在、未来の様子が伺えるこのブースにはたくさんの楽しみが詰まっていた。

また、今回のブースでは浅草三社祭り所縁の品も展示もされていた。神輿や三社祭の歴史がわかる写真や半纏など貴重なものがたくさん展示あり、心踊るものとなっていた。

そして、鼓童が浅草三社祭に参加した際の写真も展示されていた。浅草の皆さんと鼓童が一緒に祭りを楽しんでいる様子が伺える。鼓童が浅草にしっかりと根付き、浅草も鼓童を受け入れていることがよく分かるブースだ。

神輿の細部までじっくりと見られる機会は中々ないので、まじまじと見てしまう。あまりにじっくり見ていたため、気づけば開演時間間近となっていた。

 

第一部

会場は満員の賑わいとなっていた。今回の公演『粋』への期待の大きさが見える光景だ。

興奮からかざわつく会場も時間になり、幕が上がると満員の観客の声が静まった。そして静まった会場に響いたのは『木遣り』だ。『木遣り』とは労働歌の一つで「木遣り歌」・「木遣り唄」とも呼ばれており、パワー溢れる曲だ。

会場にこだまするかのように美しい歌声が響き渡る。身体の奥底から発せられる声が会場を包みこみ、その声量に圧巻された。さらに、メンバーの様々な声質や音程が重なり合い、どんどん木遣りの色が変わっていく。激しくも明るく、深い惹き込まれるオープニングだった。

木遣りがその余韻を残しつつ『三宅』が始まる。三宅は三宅島に伝わる伝統的な太鼓をベースにした曲で、独特な打ち方が魅力的な太鼓だ。徐々に打ち手が曲に入っていくのが非常に面白い。そして、打ち手一人一人によるソロは迫力満点だ。

この低い太鼓をしっかりと打ち込むにはブレない強靭な足腰、体幹が必要となる。鼓童の三宅は全員ぶれることなく、美しい姿勢のまま終始演奏されていた。

三宅のように、素朴でシンプルな構成の曲は実力や地力が見える曲だが、しっかりと打ち込み、太鼓を鳴らす鼓童はやはり素晴らしい。ダイナミックな動きを感じさせながらもパフォーマンスではなく、演奏としてしっかりと太鼓を扱っていることがよく分かる一曲だった。

迫力ある三宅の次は『KIRINAのテーマ』という曲が披露された。篠笛と竪琴が美しい旋律を奏でる曲で、太鼓だけでなく様々な楽器に精通している鼓童ならではの曲と言える。迫力ある太鼓の後にKIRINAを聴くことで繊細な音の深みがより引き立つような印象を受けた。その美しい音からも「粋」を感じることができた。

美しい旋律のKIRINAの空気を引き継ぐかのように『モノクローム』がスッと始まった。座奏の締太鼓だけで構成されたモノクロームは、極小の音量から始まり、迫力ある極大の音量を楽しむことができる曲だ。しかしただ音が小さい、大きいではなく、それぞれの音の中にある強弱や緩急といった揺らぎが面白い曲だ。聴く度に色々な発見のある鼓童の定番曲である。

音の波が押し寄せてくるモノクロームだが、この日のモノクロームはまるで音が球状に膨らんだり、小さくなったりするような印象だった。まるで音に形が見えるかのように音が体に響いてきた。聴く人を別世界へ惹き込む演奏、正に鼓童クオリティだ。

コミカルな動きが印象に残る『P.P.C.』では会場に笑いが生まれた。コミカルながらも声を発しないサイレントな動きは「チャールズ・チャップリン」を彷彿とさせる。言葉がないのになぜか笑ってしまう、引き込まれる不思議な魅力がある曲だ。

このコミカルさはまるで祭りに来て、祭りの楽しさに魅せられ陽気な気分になってしまったというような感じだ。祭りの楽しさから感じる『粋』というものとこの曲がマッチしているようでとても面白かった。

第一部の締めは『兆』だ。伝統的な太鼓から現代的な太鼓まで見せ、聴かせることができる鼓童ならではの構成だ。P.P.C.とは異なる雰囲気で祭りを感じさせるノリの良さに会場の空気も熱くなるのを感じた。

そして今回女性のメンバーをセンターにしている点に”粋”を感じた。男性も女性も関係なく楽しく関わり活躍している姿は”粋”そのものだ。新しい風は吹く瞬間を見ることができる一曲だった。

 

第二部

第二部は『雪代』から始まった。優しさと癒しを感じるような美しい音色に第一部で熱を帯びた会場が落ち着いていくのを感じた。美しさを感じるこの曲だが、やはり太鼓を一つ一つ楽器として扱っているのがよく分かる曲だ。迫力だけでない太鼓の素晴らしさを伝えてくれる魅力溢れる曲もまた”粋”と呼べるだろう。

 

次の曲『ヒトヒ』は雪代とは対照的に動き溢れる曲だ。P.P.C.とも異なる日本的な動きをするヒトヒは美しくも面白い。柔らかさとしなやかさ、身体のバネを活かしたような踊りは見ていて心が踊る。この曲も祭りの楽しさが見えるようで、出演メンバーの表情もとても軽やかだったのが印象に残っている。鼓童の曲ではあえて表情を見せないこともある為、とても新鮮に感じた曲目でもあった。

軽やかなヒトヒのあとは『道』だ。重厚な太鼓の音色が再び会場に響き渡る。今回の『粋』は昨年浅草で行われ、今年全国ツアーを行っている『道』をベースに作られている。そんな『道』という名前の通り鼓童を感じ、更には鼓童が浅草で積み重ねてきた年月を感じることができる素晴らしい曲だった。

 

ここで『大太鼓』が登場した。飾ることのない大太鼓と打ち手、自らの全身で音を鳴らす響きに会場が包まれる。深みのある大太鼓の音はとても自然で、身体にスッと音が入ってくる、安心感を感じる音色だ。ここでこういう音になるのか、という頭で考える楽しさもあるがそれ以上に身体で感じて受け止める曲だ。音を身体で受け止め、目でその肉体を楽しむ。それだけでも素晴らしさを体感できる一曲だろう。

祭りといえば太鼓、その潔さに”粋”を感じる。飾らない大太鼓もそんな潔い”粋”を感じさせてくれた。いつも聴く曲だが、テーマを考え感じるとまた別のものが見えてくる。そういった余白の部分を観客が楽しむことができるのも鼓童の公演ならではだ。

鼓童浅草特別公演『粋』を締めくくるのは『屋台囃子』だ。秩父の伝統芸能である「秩父屋台囃子」をベースとした曲で、大太鼓と並んでこれぞ”鼓童”という曲だ。古典のように何百、何千、何万と積み重ね、練り上げられてきたからこその面白さがこの曲には詰まっている。「何度見ても良いな」と感じ、演奏者ごとの異なる色を楽しむことができる。

この日の屋台囃子は”粋”というテーマを通して見たことからか、明るさや楽しさというものが見えた。太鼓を一心不乱に打つメンバーは大変そうだが、どこか楽しそうで、笛や鳴り物、締太鼓の音色も祭りの華やかさがいつもよりも増して聞こえるようだ。

『屋台囃子』が終わり、客席からは会場を埋め尽くす拍手が湧き上がる。鼓童と浅草、観客が一つになったのを感じた瞬間だった。鼓童浅草特別公演『粋』の大成功を物語る会場の空気に包まれながら『粋』は幕を閉じた。

 

千穐楽のスペシャルサプライズ

今回の『粋』はこれでは終わらなかった。連日アンコールも賑わっていたが、千穐楽の公演ではなんとサプライズが披露された。なんと神輿が登場したのである。ここの神輿はとても貴重なもので、浅草の舞台に登場するのは、2012年5月の”平成中村座”以来、7年振りとのことだ。

 

浅草での特別公演を通して浅草との絆を深めてきた鼓童。『粋』という公演にふさわしいサプライズに会場も盛り上がる。浅草の方と共に神輿を担ぐ鼓童、浅草という街を愛し、浅草が東京での故郷となった瞬間を感じることができる素敵なサプライズだった。

最後は、浅草神社の総代や仲見世町会会長を務める「冨士滋美」さんと、鼓童代表「船橋裕一郎」さんの浅草と鼓童についてのお話があった。浅草が鼓童を受け入れ、鼓童が浅草でどのように頑張ってきたかが分かる素敵なお話であった。

大歓声の中『粋』はフィナーレを迎え、終幕した。

 

浅草と鼓童が一つになり、その絆を見た素晴らしい公演

鼓童浅草特別公演『粋』、浅草という街・人と鼓童の繋がりを見ることができたとても素晴らしい公演だった。長年の浅草特別公演を経て、浅草が佐渡と同じように鼓童にとって安心できる場所、故郷となったことが分かる公演でもあった。

古典を踏襲しつつも、いつもの鼓童では見られないような一面もたくさん見ることができた今回の「粋」。特に印象に強く残ったのは”メンバーの笑顔”だった。キリッとした公演が多い鼓童だけに意外で、公演後に鼓童代表である船橋裕一郎氏に「演出の一つだったのですか?」と訪ねた所、「メンバーの表情は演出ではなく、自然と出てきたものです」とお話をいただいた。つまり、鼓童のメンバーが心のそこからこの「粋」を楽しんでいたことが分かる。

この「粋」を経て更なる絆の繋がりを深めた浅草と鼓童、浅草という街と鼓童のこれからの活躍が非常に楽しみである。また、鼓童は9月より『鼓童ワン・アース・ツアー2019「道」全国ツアー』が再開される。こちらも注目の公演だ。

鼓童ワン・アース・ツアー2019「道」全国ツアー
https://www.kodo.or.jp/performance/performance_kodo/16691

執筆:稲毛佳祐

Information

ライブ名 鼓童浅草特別公演『粋』
開催日 2019年6月27日(木) ~ 30日(日)
場所 浅草公会堂(東京都台東区)
写真 演奏写真:岡本隆史
展示ブース写真:和楽器メディア 稲毛佳祐

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撮影:岡本隆史

 

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