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【ライブレポート】
鼓童特別公演「道」…伝統と歩み、そしてその先へ。
鼓童という形が見えた公演。

撮影:岡本隆史(Takashi Okamoto)

 2018年6月から8月にかけて、太鼓芸能集団「鼓童」鼓童特別公演2018「道」が開催された。演出を鼓童代表の”船橋裕一郎”さんが務める今回の公演は2部構成の2時間、鼓童が持つ太鼓の魅力を身体でしっかりと感じることができる素晴らしい公演となっていた。

鼓童特別公演「道」

鼓童特別公演「道」は2018年6月から8月の間で開催される鼓童の全国公演。浅草を始めとした全国13都市・全15公演で鼓童の演奏が披露される。演出は鼓童の代表を務める”船橋裕一郎”さんが自ら手がけている。

鼓童特別公演「道」の趣旨は鼓童公式Webサイトにて、以下のように記されている。

引き継がれる伝統、魂を揺さぶる太鼓の響き。
鼓童の真髄がここにある━━━。

『道』は、前身の佐渡の國鬼太鼓座も含め、約半世紀の歳月をかけて継承し、練り込まれた、鼓童にとって根幹ともいえる公演です。

鼓童代表を務める船橋裕一郎演出のもと、いわば古典ともいえる舞台の中から「型」を抽出し、鼓童のDNAを次代へと受け継いでいきます。

太鼓芸能集団「鼓童」 鼓童特別公演「道」より引用

 

鼓童代表「船橋 裕一郎」さんの「道」にかける想い

鼓童特別公演「道」を語る上で欠かせないものがある。それは、演出を務める鼓童代表の「船橋裕一郎」さんの熱い想いだ。和楽器メディアの姉妹ブランドである”邦楽村”では、公演開催にあたり「船橋裕一郎」さんへのインタビューを行った。そこには「道」に対する代表の想いがあった。

 「道」の公演を行うのは、「自分たちの太鼓とはどのようなものなのか」と。今一度過去を振り返り学んだほうがいいのではないかという想いからです。
鼓童はここ5~6年新作を発表し続け、どちらかといえば「革新」に重きを置いてきたように思います。

 このスタイルはほぼ半世紀近く継続してきた舞台を基調とし、「道」というタイトルをつけてからは今回で3度目になります。継続して伝統に立ち返り、深め、洗練させていく作業を行うことで、「伝統」と「革新」の両輪を強くしていきたいという想いがあります。

 まさに道のように連なっていく演奏活動を自分たちの軸とし、そこをより強くした上で新たな分野に挑戦していきたいですね。

 

船橋裕一郎さんへのインタビュー記事について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

【ライブレポート】この公演は鼓童の歴史、歩んできた「道」だった

撮影:岡本隆史(Takashi Okamoto)

 鼓童特別公演2018「道」、その名の通り鼓童が今まで歩んできた“歴史 = 道”を身体で感じることができた素晴らしい公演だった。

 演奏された曲は時代を感じる曲から最近の曲まで様々なリストとなっていた。比率としては昔から鼓童を支えてきた曲が多めだ。これは船橋さんが語った「落語も内容は噺家の解釈で変わるけど、ここは外せないという大枠や大筋がある」ということなのだろう。

 今回の公演、一番印象に感じたのは“太鼓の音”だ。演出は舞台装置や照明効果をほとんど使用せず、太鼓と奏者を強調するものだった。シンプルだからこそ、太鼓という楽器・奏者の腕がよく見える。太鼓は良くも悪くも、見た目や動きでも観客を惹きつけることができる。その一方で音はどこかへ忘れ去られてしまうことも多い。今回の公演は“太鼓が楽器である”ということを改めて感じさせてくれる。

▼締太鼓の多彩な音が特徴的な曲「モノクローム」

撮影:岡本隆史(Takashi Okamoto

▼鼓童だからこその「大太鼓」

撮影:岡本隆史(Takashi Okamoto)

 鼓童特別公演2018「道」では音の存在感を大きく感じたが、もちろん動きという面でも鼓童をしっかりと感た。

 それはダイナミックな迫力ではなく、緻密な動き、ちょっとした仕草などの美しさなどだ。その所作の美しさからは「坂東玉三郎」さんと歩んだ歴史をかいまみた。鼓童はこれまで様々な挑戦をしてきたことで、太鼓だけでは得られなかった厚みを手に入れ、歴史を豊かにしている。

▼ここ十数年で太鼓界に定着した「担ぎ桶太鼓」からも鼓童のエッセンスを感じることができる

撮影:岡本隆史(Takashi Okamoto)

▼舞からは坂東玉三郎さんと歩んだ歴史を感じた

撮影:岡本隆史(Takashi Okamoto)

 様々な太鼓を打ち分ける鼓童。特に三宅や屋台囃子(秩父屋台囃子)が素晴らしかった。郷土芸能を踏襲するこれらの打ち方からは伝統を強く感じることができる。今日、太鼓が多くの人に親しまれるようになった背景には、鼓童を始めとする多く和太鼓奏者や団体、そこに関わる人の「道」がある。それを感じさせてくれる演奏だった。

▼独特な打ち方で迫力のある動き・音が魅力的な「三宅」

撮影:岡本隆史(Takashi Okamoto)

▼フィナーレを飾る「屋台囃子」は観客の心をしっかりと掴んでいた。

撮影:岡本隆史(Takashi Okamoto)

 フィナーレの屋台囃子が終わると会場からは拍手が沸き起こった。拍手はいつまでも鳴り止まず、鼓童の演奏が素晴らしかったことを会場の空気から感じることができた。

「鼓童」という一つの形を見て、魅せられた公演

撮影:岡本隆史(Takashi Okamoto)

 鼓童特別公演2018「道」を観覧して、”鼓童という一つの伝統”を垣間見た。

 伝統芸能である歌舞伎や落語・狂言や能、三曲などは、長い歴史の中で色々な人が演じ、観客も内容を把握しいている。それでもそこに深みや個性、味があって何度もお客さんが見るというサイクルがあるのだろう。この公演からもそんな「味」のようなものを感じることができた。鼓童が培ってきた歴史があり、お客さんはその歴史そのもの楽しむ、これこそ正に芸能だろう。

 原点に立ち返った鼓童。これから5年10年、さらにその先に何を見据えているのだろうか。「道」から感じた伝統という側面と、2018年後半から開催される「巡 -MEGURU-」のような革新的な側面、鼓童がどこへ進んでいくのか楽しみである。

おまけ「鼓童が分かる展示スペース」

 今回お邪魔した浅草公演では、浅草公会堂のホールに展示スペースがあった。そこでは鼓童のメンバーの紹介や鼓童の歴史などのパネルがたくさんあり、鼓童雨がよく分かる内容となっていた。

 また、展示スペースにはRolandと共同開発中の「電子担ぎ桶」や11月から始まる新作ツアー「巡 -MEGURU-」についてのコーナーもあった。

▼鼓童のメンバーパネル

 

▼鼓童メンバーの研修生時代の思い出の品。手作りの撥と撥を作成する際の削り節。

▼Rolandと共同開発中の電子担ぎ桶。個人的には試作品(右側の太鼓)のメカメカしさに惹かれる。

 

▼「巡 -MEGURU-」コーナー

 

Infomation

ライブ名 鼓童特別公演2018「道」
開催日 2018年6月9日(土) ~ 2018年8月5日(日)
場所 北海道、岩手、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、東京、愛知、京都
出演 鼓童
写真 ■演奏写真
岡本隆史(Takashi Okamoto)
■インタビュー写真、会場展示物写真
稲毛佳祐(邦楽村・和楽器メディア)

 

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