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【ライブレポート】
声と和楽器が織りなす臨場感溢れる舞台。
声劇和楽団『姫ものがたり』

8月30・31日の二日間、東京都千代田区にある紀尾井ホールで、声劇和楽団主催の声優と和楽器による音楽朗読劇『姫ものがたり』が開催された。声優による朗読と和楽器によるBGMや音の演出というとてもユニークな朗読劇だ。

今回はその、生音の和楽器と臨場感ある朗読が融合した迫力溢れる朗読劇、声劇和楽団『姫ものがたり』の様子を紹介する。

声劇和楽団 とは

『声劇和楽団』は声優・堀江一眞氏さんと和楽器奏者・田中奈央一さんによる音楽朗読劇ユニット。

田中さん率いる和楽器陣の美しい音色と、堀江さん率いる朗読陣の迫真の演技が劇的なドラマを織り成すのが魅力。日本の昔話をリメイクを公演し、和楽器の演奏と共に楽しめる音楽朗読劇を一から創り上げ、これまで7回にわたる上演で高い評価を得ています。

今回の朗読劇『姫ものがたりは』は「瓜子姫」と「かぐや姫」をリメイクした劇となっている。

 

レポート 『姫ものがたり』

瓜子姫

「瓜子姫」は、瓜から生まれた瓜子姫が主人公の日本民話だ。日本各地に様々な瓜子姫が伝承されているが、今回は天邪鬼が瓜子姫を騙して、瓜子姫に化け、お祭りの邪魔をしようとするが瓜子姫が機転を効かせてそれを阻止するといったコミカルなストーリーとなっていた。

コミカルで可愛いらしい瓜子姫を演じたのは声優の本多真梨子さんだ。

瓜子姫は元気で明るく表情豊かな役柄だ。本多さんはそんな瓜子姫そのものだった。それは台詞だけでなく、動きや表情などからも明るさや楽しさが伝わってくる演技で、見ているこちらも自然と楽しくなった。

その瓜子姫を見ていると、観客も自然とその世界へ惹きこまれ、一緒に物語を体験している感覚になる。これは朗読というリアルだからこそ感じることができる臨場感だ。

 

そして、瓜子姫の邪魔をする天邪鬼を演じたのは声劇和楽団の主宰でもある堀江一眞さんだ。

意地悪だがどこか憎みきれない天邪鬼という役柄がとても分かる演技だった。瓜子姫の可愛らしい動きとはまた異なる、ダイナミックで「悪者」といったことが喋り方や動き方からまっすぐに伝わってきた。悪者なのだがどこか可愛らしさを感じる天邪鬼、悪者のはずだが見ていると嫌いになれないキャラクターだ。

 

さて、瓜子姫では、機織りなどの音を表現する部分が様々出てくるのだが、主演の本多さん演じる瓜子姫の軽やかで可愛らしい表現と、琵琶の音がとてもマッチしていた。また、全体的にコミカルで可愛らしい雰囲気が和楽器の音で楽しく表現されていたり、各登場人物のキャラクター性や雰囲気を和楽器が更に引き立てており、「次はどうなるのだろう?」といった展開を飽きることなく終始ワクワクしながら楽しませてくれた。

 

和楽器による独演会

今回の『声劇和楽団』の劇では今までにない試みとして、和楽器による独演会も開催された。合計4回の舞台で毎回異なる演目が楽しめる独演会となっており、和楽器メディアが観覧した日は黒田鈴尊さんによる尺八の独演会だった。

尺八古典本曲と、現代的曲の2曲が披露された。尺八古典本曲はその難しさの中に音のゆらぎや移り変わりを感じることができ、まるで曲を通して何かを訴えかけるような雰囲気であった。現代曲では尺八古典本曲とはまた異なる様々な技法が登場し、音の刻みを楽しむことができた。急に変化する音や息など、尺八というシンプルな楽器に込められた可能性を感じ取れる演奏だった。

 

かぐや姫

「かぐや姫」といえば、日本では知らない人がいないくらい有名な物語だ。

この悲しく切なくも美しい物語は、和楽器の余韻ある音と非常に良く融和し、美しい世界を奏でていた。物語の中で風を笛の音色で表現するシーンなどがあったが、尺八の優しい音色を聞くと本当に風が吹き、草原が見えるような錯覚を覚えた。また、出演者の方の表現や迫力、雰囲気に瓜子姫と同じく自然と世界へ惹き込ませてくれた。

かぐや姫で主演を演じたのは声優の黒木ほの香 さんだ。美しい衣装を纏い、憂いを感じさせる表情はかぐや姫そのものだった。瓜子姫の明るさとは対照的に、美しいながらも寂しそうな表現を直接見て、声優という方々の演技のすごさを肌で感じた。かぐや姫も台詞だけでなく、動きや細かな仕草などでもその世界を感じさせてくれた。

かぐや姫を愛する帝を演じたのは同じく声優の横尾瑠尉 さんだ。美しくカッコよいながらもそれを鼻にかけない気品を感じさせてくれる役柄を熱演されていた。普段はクールさを感じさせる帝だが、時に熱くなるシーンもあり、表に現れる熱量の差の演じ分けは素晴らしかった。

 

かぐや姫と帝が織りなすかぐや姫は、美しい情景が頭に浮かぶ劇だ。特に、クライマックスのかぐや姫を月へ帰らせまいと帝が軍勢を率いて家とかぐや姫を守るシーンは格別だった。マイクと和楽器、演者しかないはずの舞台に家と大勢の軍勢、輝く月や夜空が見える程であった。和楽器が動きを生み、その動きにのって声優が躍動感を増す、そんな一体感を感じた。しっとりとゆったりした優しく美しい情景のシーンから、迫力や緊迫感あるシーンまで、様々な移り変わりを楽しむことができる素敵な朗読劇だ。

▲写真はかぐや姫(演:黒木ほの香)を月から守ろうとする帝(演:横尾瑠尉)の熱いシーン

 

まとめ
『姫ものがたり』それは、風景や場面が何度でも蘇る美しく・素晴らしい舞台

声劇和楽団『姫ものがたり』とても素晴らしい朗読劇だった。

声と和楽器だけという余白が観客に想像する余裕を与えてくれる、そんな印象を感じた。目に見えるもの、耳で聞こえたものが全てではなく、受け取ったものを観客が再構築し、更に楽しむことができる素敵なものであった。

昔話と和楽器の親和性が高いのはある種の必然と呼べるが、和楽器と声優さんが融和している事もとても良かった。BGMと台詞、といった独立したものではなく、お互いがお互いを支え合い、一層の相乗効果を発揮するような音と声の融合を感じることができた。

目を閉じると風景や場面、迫力を何度でも思い出すことができる素敵な舞台『姫ものがたり』。来年も開催される際は、是非また観覧したい。

 

執筆:和楽器メディア 稲毛

Information

舞台名 声劇和楽器団『姫ものがたり』
開催日時 ・2019年8月30日(金)14時開演/19時開演
・2019年8月31日(土)13時開演/18時開演
場所 ・紀尾井小ホール 
スタッフ ・脚本:Sija
・音楽:旭井翔一
・衣装:熊谷美幸
・メイク:氏川千尋
・メインビジュアル:切り絵作家・大橋忍
・デザイン:川口博司(NEWHEADworks)
・構成・演出:堀江一眞 田中奈央一
・制作:声劇和楽団 あきやまくみこ
キャスト(朗読) ・黒木ほの香
・横尾瑠尉
・本多真梨子
・平井善之(アメリカザリガニ)
・米内佑希(30日のみ出演)
・工藤雅久(31日のみ出演)
・高橋孝治
・有沢俊浩
・澤谷香織
・堀江一眞
キャスト(演奏) ・久保田晶子(琵琶)
・黒田鈴尊(尺八)
・田中奈央一(琴・三味線)
協力 ・株式会社アクセルワン
・株式会社アクセント
・アミュレート
・株式会社81プロデュース
・株式会社オレンジ
・株式会社賢プロダクション
・株式会社スターダストプロモーション
・株式会社松竹芸能
・CAndT伊藤久美子
・有限会社メリーミューズ
(50音順)
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