【演奏会レポート】
早稲田大学虚竹会 百周年記念演奏会

2018年11月23日、早稲田大学虚竹会 百周年記念演奏会が開催された。虚竹会の定期演奏会は例年、早稲田大学の学生会館で開催される。しかし今年は記念すべき100周年の演奏会ということで、大隈記念講堂での開催された。

大隈記念講堂は国指定の文化遺産に登録されているほど由緒正しきホールで、100周年を飾るにはふさわしい場所だ。

この日の演奏会は尺八を主とした会ならではの、普段聞けないような尺八曲が豊富にラインナップされ、前半6曲・後半6曲の合計12曲披露された。

前半

開演とともに演奏された曲は”雲井獅子”だ。尺八古典本曲の中では息抜きなどに吹かれた少し異色の曲である（諸説あり）。今回はOBを交えての大合奏で圧巻の演奏であった。OBと共に演奏ができるというのも長い年月続いているからこそだ。虚竹会の歴史が分かる、そんな演奏である。

OBの演奏も素晴らしいが、現役虚竹会員の演奏も引けを取らない立派な演奏だ。しっかりと練習するという文化が昔から脈々と受け継がれているのだろう。

この日、初代山本邦山作曲の”尺八二重奏曲第六番 虹“を初めて生演奏で聴くことができた。尺八二重奏曲第三番 對動（対動）や尺八二重奏曲第四番は度々聴くことができるが虹は本当に珍しい。虹という曲自体の素晴らしさもさることながら、虚竹会員の技術力の高さと挑戦する心に感動した。

そして、藤原道山作曲の”東風”も披露された。尺八マリンバなどで構成されている曲だが、この日は尺八、津軽三味線、ヒューマンビートボックスという構成での演奏だった。津軽三味線は早稲田大学の津軽三味線サークル”三津巴”、ヒューマンビートボックスは早稲田大学の”WasedaBeatz”が賛助として登場した。

細かな音色の多い高難度の曲であるが、テンポ良く演奏されていた。古典とも現代邦楽とも違うテンポ感はとても難しい。重ねてきた練習の日々がよくわかる演奏だ。

尺八の音に加え、ヒューマンビートボックスの多彩な音と津軽三味線の迫力ある音が見事にマッチし、オリジナリティ溢れる東風となっていた。

後半

後半に入ると一年生による六段の調が披露された。緊張する中での初々しい演奏は初心を思い出させてくれる。そしてここからまた新たな虚竹会が芽吹いていくことが見える演奏だ。これ程の大きな舞台で演奏するのは緊張することだが、その経験は何にもかえがたい貴重な経験だろう。

池上眞吾先生作曲の”約束のウタ”も披露された。この曲は”スーホの白い馬”と呼ばれるモンゴルの民話を題材とした曲である。スーホの飼っていた白い馬から作られた馬頭琴が奏でた曲をイメージして作られている。前半はスーホの白い馬の朗読、後半は演奏といった構成になっている。

約束のウタ、心の中に静かに響き渡るような音色が印象的なとても美しい曲だった。箏と十七絃の音色が優しく心の中に広がり、尺八の深みある音色が情緒に訴えかける。広さと深さがモンゴルの草原をイメージさせてくれる。

虚竹会の”川瀬庸輔”師範による”下り波”もとても印象に残った。独特の空気感と息遣い、会場全体が師範の演奏に惹きこまれていくのを肌で感じた。派手さや勢いで吹いている曲ではないのに人が自然と惹きこまれる。師範の技術力の高さと尺八という楽器が持つ魅力を確かに見た。

ラストの前には虚竹会の幹事長と師範からの挨拶があった。挨拶の後新しい幹事長に引き継がれ、四年生には花束が贈呈された。こういった一幕は時間が決まっている学生団体ならではの光景だ。四年生は区切りと共に新しい道へ、残された部員も新しい体制で進んでいく。ワクワクが詰まった瞬間だった。

そしてむかえたラスト。ラストを締めくくったのは、初代山本邦山作曲の”竹の群像“。この曲は多くの尺八が必要となる高難度の曲である。その為、人が揃わず中々演奏がされないレアな曲だ。本当に難しい曲なのだが、演奏のクオリティが非常に高く驚かされた。各パートごとのボリューム感や引く、出るといった部分のバランスなどがとても良かった。

プロの尺八演奏家”田辺頌山”先生の尺八の音色が大隈記念講堂に広がり、竹の群像という曲が一層輝きを増す。

その輝きと調和しつつ、ひけを取らない程虚竹会員の演奏も輝いていた。今回の記念演奏会の集大成と呼ぶにふさわしい演奏だ。

虚竹会の定期演奏会、今年は例年以上に挑戦が見える素晴らしい演奏会だった。今回紹介しきれなかった他の曲もクオリティが高く、これからが本当に楽しみな団体だ。百周年を迎え、これからも様々な演奏で尺八の素晴らしさ披露してほしい。

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